Open Cafe System

記事:2011年2月27日(更新)

1. OCS(Open Café System)とは

OCSとは、私たちNPO法人オープンコンシェルジュが推進する、FOSS4Gを中心とした各種技術を集約したパッケージです。 OCSは各種アプリケーションを連動させることで、地理空間情報データの管理や解析、実務への援用を、簡易な入力インタフェースと綺麗なデータ出力により実現します。 OCSを導入することで、あたかも喉が渇いた時にカフェに入って注文するだけで美味しい紅茶を味わえるように、地理空間情報を活用したいユーザの希望を優しく叶えることができるのです。FOSS4G(Free OpenSource Software for Geospatial)は低コストでの導入が可能であること、またそれにより既存GISを利用できなかった場面における活用が期待されています。しかしその一方で、様々な関連アプリケーションが乱立していることや技術的な敷居の高さが普及の阻害要因になっています。こうしたことが背景に既往の対策として関連アプリケーションのパッケージ化が行われてきました。GISのインストールを簡易にし、多機能な環境が構築可能であることが特長ですが、汎用性を担保するため作業実施手順が煩雑になりがちであり、非技術者には運用が困難であることがFOSS4G普及上の課題です。OCSは、FOSS4Gの普及上の課題を解決するために、利用者の視点から導入・運用の困難さを低減するために開発されているパッケージソフトウェアです。「Open Cafe System 自然環境分野におけるFOSS4Gパッケージの開発と適用」を併せてご参照ください。

2. 利用しているFOSS4G

独自に開発・提供しているFOSS4Gを中心とした各種技術を集約したパッケージOpen Café System(以下「OCS」)のシステム構成は図1の通りです。ます。OCSは、自然環境関連分野において、地理空間情報技術に関する専門的な知識や技術を持たないエンドユーザによる活用を想定しており、一般的なWebブラウザ等を通じて利用可能なクライアント-サーバモデルを採用しています。また、自然環境分野におけるGIS活用形態の分析をもとに、ネットワーク環境に合わせた最適なアーキテクチャを提供します。OCSサーバは、Apache, Tomcat, PHP等の上に、複数のFOSS4Gアプリケーションが連携して動作しています。DBMSにはPostgreSQLの空間拡張であるPostGISを、地図サーバにはGeoServerを、表示にはJavascriptライブラリであるOpenLayersを採用しています。またGeoEXT Stylerを利用することで、GUIでの簡易なSLD(Styled Layer Descriptor)編集によるスタイル変更を可能としています。さらに、ユーザインタフェースを担うCMSとしてDrupalを採用し、エンドユーザによる利用の簡易性を高めています。OCSクライアントは、主にWebブラウザを通じてOCSサーバにアクセスし、データの取得や更新等を実行できます。エンドユーザは、OCSの構造や各アプリケーションを意識することなく利用できます。

図1:Open Café Systemの構成

3. 代表プロジェクト・代表論文

3-1 代表論文

  • 福本塁・岡内俊太郎・中村和彦・中山悠・古橋 大地・菊池風奈・原昇平・白髭拓也・風間ふたば (2010c) FOSS4G を利用した水環境調査ツールの運用簡易性に関する研究―水環境分野におけるOpen Café System(OCS)の適用事例―.「Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2010」,58.
  • 中村和彦・福本塁・齋藤仁・中山悠 (2010b) Open Cafe System: 自然環境分野におけるFOSS4Gパッケージの開発と適用.「Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2010」,59.
  • 杉浦史門・中村和彦・齋藤仁・福本塁・中山悠 (2010) 近道となる道順選択と地図表示 -pgRoutingを利用した経路探索とその可能性-.「Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2010」,61.
  • 中山悠 (2010) オープンカフェで逢いましょう.「GISNEXT 」, 25, 26, 27, 28, 31, 32, 33, ネクストパブリッシング.
  • 中村和彦・福本塁・杉浦史門・中山かなえ・齋藤仁・古橋大地・武正憲・斎藤・馨・中山悠 (2010a) 上信越高原国立公園鹿沢園地におけるFOSS4Gの活用 -Open Cafe Systemを用いた国立公園の利用と管理-.「地理情報システム学会講演論文集」,19.
  • 福本塁・岡内俊太郎・中村和彦・中山悠・古橋大地・佐山公一・小川耕・原昇平・菊池風奈・風間ふたば (2010a) 水環境分野におけるWeb-GISの相互運用環境構築の試み―Open Cafe System(OCS)を用いたFOSS4Gの活用―.「地理情報システム学会講演論文集」,19.
  • 福本塁・岡内俊太郎・菊池風奈・白髭拓也・中村和彦・中山悠・古橋大地・佐山公一 (2010b), 携帯電話を使用した水質データベースと利用方法の構築.「第44回日本水環境学会年会講演集」,662.
  • Nakamura, K., Sugiura, S., Fukumoto, R., Saito, H., Tsuchiya, K., Nakayama, Y. (2010) Challenges and Possibilities of Open Cafe System - Application study for the landscape planning -, FOSS4G2010.
  • 泉岳樹・齋藤仁・中山悠・中村和彦・福本塁・佐々木龍郎・ヨコミゾマコト・片桐由希子・石川幹子 (2010) FOSS4G を活用した新たな都市計画支援ツールの開発と実践的利用に関する研究―ランドスケープデザイナーと建築家の協働を目指して―.「日本地理学会2010年度春季学術大会発表要旨集」,77,197.

3-2 代表プロジェクト

(1) 国立公園の利用・管理用Web-GISサービス

上信越高原国立公園内の鹿沢園地(群馬県吾妻郡嬬恋村)を対象に、国立公園の利用・管理用Web-GISサービスを、OCSを用いて提供しています(中村ほか、2010)。

鹿沢園地には、インフォメーションセンターと宿泊施設(休暇村)があり、園地は「かえでの小径」エリアと「清流の小径」エリアを中心に整備されています。鹿沢園地では高速インターネット回線が利用できないので、OCSサーバをインフォメーションセンター内に設置し、無線LANによるローカルネットワークを構築しました(図2)。OCS利用者は、無線LANに接続可能な端末をインフォメーションセンター周辺に持ち込むことで、OCSのサービスを利用できます。現在提供しているサービスは、鹿沢園地の地図および航空写真配信(GeoServer、OpenLayers、OpenStreetMap、図3)、位置情報付き写真のアップロード(PostGIS、PHP)、園地内の説明板までの最短経路検索(pgRouting)などです。これらは全て、Webブラウザによって利用することができます。

図2:『国立公園の利用・管理用Web-GISサービス』構成図
図3:地図と航空写真

(2) 都市計画支援ツール

ランドスケープデザイナーと建築家が協働するための都市計画支援ツールを、OCSにより実現しました (泉ほか, 2010) 。

従来はCADの図面のみを利用し、建物と樹木との位置関係などは手作業で解析を行っていました。そのため、関連する高度な知識・経験が必要であり、新たな建物計画案が発生した場合には始めから作業をやり直す必要がありました。そこで、OCSを導入しました。インターネット接続が不要なので、ローカルネットワーク内でサービスを提供しました。建物や樹木のデータをPostGISデータベースに格納し、各クライアントから、Webブラウザを通じた計画案アップロード、その計画案と樹木との重なり判定、そして結果の表示とCSV形式でのダウンロード等を可能にしました。図4に、プロトタイプの都市計画支援ツールの構成と解析結果を示します。新たな建替え計画プランの建物により伐採せざるを得ない樹木が自動判定され、その樹種や本数などの情報がWeb 上に表示されています。

都市計画支援ツールの特徴は、Webベースでの操作ゆえに非GIS技術者でも利用が容易な点にあります。ゆえに、都市計画支援ツールは、これまでGISが活用されてこなかった分野にも導入が容易です。

図4:都市計画支援ツール(プロトタイプ)の構成と解析結果の表示画面

(3) 水質調査支援システム WaterVoice

FOSS4GおよびGISの知識を持たない一般市民を対象に、水質調査結果を現地で登録し、また、現地で他のデータを閲覧し比較できるクライアントサーバシステムとして、携帯電話アプリケーションおよびOCSを用いて提供しています(福本ほか、2010a)。

近年、身近な水環境の全国一斉調査(2009年時点で1011団体参加 5638調査地点)を始めとして、一般市民が水環境保全活動に多く参加しています。しかし、一般市民が水質測定の結果について地理情報を含めて管理集計し、世に発信していくには大きな労力負担と技術的な知識の向上が求められます。そこで、従来、記録・管理・集計を紙面にて手作業で行っていた部分を携帯電話アプリケーションへの入力に置き換えることで、現地で登録・閲覧が行え、かつ地図上に結果の公表までを自動で行えるシステムを構築しました。

技術的には、携帯電話内臓GPSにより緯度経度を取得し、GeoserverからWFS配信されている流域ポリゴンを用いて、WPSとして実装されたPostGISによる流域判定を行い、最寄りの河川属性情報を付与した上でデータベースアクセスを行い、現地での結果登録・閲覧、地図上での自動配信を行っています。

将来的には学術研究によるデータや行政観測によるデータと共にそれらを補完することができる市民観測データベースとして整備し、OGC相互運用技術を用いて相互運用環境を構築し(福本ほか、2010b、2010c)、様々なシミュレーションプロセス(これらもWPS化予定)の入力パラメータとして誰でも使えるように提供していくことを目標にしています。

図5:WaterVoiceの構成図と表示画面

(4) 現地調査・解析支援システムTMU FSAS

現地調査の結果をもとに、シミュレーションを目的とする計算機へのデータ投入を支援するために、OCSを用いて現地調査・解析を支援するシステムを構築しました。

従来、野帳に書き込んだ内容をデジタルデータ化して、計算機の要求するフォーマットに変換するまでを手作業で行っていました。データを取得した後で、解析の準備に入るまで、一定の時間を割く必要があります。TMU FSAS(Tokyo Metropolitan University Field Survey Assistance System)により、野帳への入力をデジタルデバイスに置き換えることができます。計算機の要求するフォーマットへの変換もCSV等のデータとして提供可能です。TMU FSASを使用すると大幅な作業の自動化を実現し、現地調査取得後から計算機への投入までのコストダウンをはかることができます。

TMU FSASの構成の概要を図6に示します。調査準備として、調査項目を指定します。例えば、樹木調査であれば、樹高・胸高直径などが調査項目にあたります。調査地では、モバイルデバイスに表示された地図に調査位置とともに調査項目を入力します。調査地でインターネット回線が使えない場合でも、ノートPCに搭載したOCSサーバにローカル無線LANを介して接続し、データの登録が行えます(図7)。調査後、OCSサーバ内のデータ蓄積用のDBへ、取得した現地調査の結果を反映し、計算機へ投入するためのデータ(CSV等)へ変換出力します。

TMU FSASは特定の現地調査に特化している訳ではありません。樹木調査だけでなく、水質調査や森林調査、その他自然環境に関わる現地調査において、現地調査の準備から計算結果の解析準備までを一貫して支援することができます。ユーザは調査項目を選択することができ、多分野での作業の効率化が期待できます。

図6:TMU FSASの構成
図7:僻地におけるローカルWIFI環境の構築
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Shimon Sugiura,
2011/02/27 4:56
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